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現在の研究計画
 平成17年度の研究計画は下記のとおりです。

 

平成16年度の研究計画はこちら


I 研究の全体像 〜持続可能な防災政策のあり方の検討〜

 我が国の人口は近い将来減少し、これまでのような経済成長は困難となる。国・地方を合わせた借金総額は1000兆円を突破し、地球環境の悪化による温暖化等も現実となりつつある。我が国が今後も持続可能であるためには、社会・経済システムのあり方の根本から問い直されるべき局面に差し掛かっている。一方で科学技術、とりわけ情報技術の飛躍的な進歩は、我々の抱える様々な問題を劇的に解決する可能性も秘めている。
  このような社会経済環境の劇的な変化は、防災政策に関して大きなパラダイムシフトを迫っている。例えば住宅の耐震化一つ考えても、今後の人口減少を視野に入れれば、もはや耐震改修を行う必要はなく、既存の耐震住宅ストックですでに十分なのかもしれない。ハード対策に資金を投じることは赤字財政のもとではやや否定的な風潮があるが、それが自然環境を守るための投資にもなるのであれば、むしろ積極的に行うべきなのかもしれない
  これからの社会において、あるべき防災政策の姿とはいったいどのようなものなのであろうか。こうした問題意識のもと、持続可能な社会における「防災政策論」の確立を目指して研究を推進する。
  特に今年度は、成熟した経済における災害復旧・復興の問題点に焦点を当てる(各論1、3)とともに、発展途上経済におけるそれとの比較(各論2)を通じて、成熟した経済が持続可能であるためにはどのような対策が必要かについて検討を加える。また、これらと平行して、これからの社会における防災政策の課題設定・立案・執行・評価の枠組みをどのように構築するか(各論4)についても研究を行う。


II 各論

1.「地域経済の早期復興を視野に入れた災害対応に関する研究」

【視点・問題意識】
  かつてのような高度成長期においては、災害を受けた地域経済は復旧・復興需要によって災害前以上に潤うことが多く、事実上経済復興はほとんど問題にはならなかった。ところがバブル崩壊以降、我が国の経済全体が低成長期を迎え、今日では地域経済復興はほとんどの大災害の被災地で重要課題の一つとなっている。
  経済復興の問題は、被災者支援や住宅再建の問題に比較すれば、具体的政策手段に乏しいこともあり、災害対応期においてはプライオリティーが低いのが現状である。しかしながら、地域経済復興に中心的役割を果たすと考えられる自治体の産業振興部局や商工会議所等が救命救助や被災者支援等の初動対応業務が割り当てられているわけではなく、初動期から経済復興を視野にいれた活動を行う余地は十分にあると思われる。何よりも最大の対策は地域経済の活動を止めないことにある。このため事業の継続をできる限りサポートする仕組みや、災害対応に必要な資源を被災地域の経済から調達することなどによって、地域経済の早期復興を支援することは、災害対応期においても非常に重要な課題である。


【研究内容】
 具体的には次のような点を明らかにする必要がある。第一に被災企業はどのように事業を再開しているのかを明らかにする。たとえばライフラインも道路も使えない状況下ではそもそも事業継続は困難であると思われるが、社会基盤への依存度も産業によって大きく異なると思われる。産業ごとにどのような被害が事業再開にクリティカルに効いてくるのかを明らかにする必要がある。第二に、地域経済が災害対応に必要な資源を供給する能力があるのかどうかを見極める必要がある。このために、「余剰生産力(idling capacity) 」が被災地企業にどれだけ存在したかを明らかにする。第三に、もし余剰生産力が被災地企業に存在したとすれば、なぜそれが活用できなかったのかを明らかにする。これにより地域経済資源を災害対応に利用するための政策ツールの開発へとつなげることができる。

【期待される効果とその意義】
  巨大災害時に地域経済復興のための具体的提言が可能になるとともに、これらを視野にいれた平時の企業防災、地域経済の取り組みについて具体的な方策を示すことが可能になる。

【平成17年度の研究計画】
  新潟県中越地震の被災地である小千谷市と、台風23号被災地の兵庫県豊岡市の商工業者に対して行った社会調査の結果を分析し、被災地域の被害と業務再開の関係、および余剰生産力の存在について検証するとともに、地震災害と風水害災害との違いについて検証する。余剰生産力が明らかにみられる場合は、それらをどう組織して災害対応時に活用する体制を整えるかという計画の問題に議論が移るが、そうでない場合には、そもそもライフライン停止時に事業を継続するための「自助」としてどのような対策を行うべきかという課題に議論が移ることになる。このため今後の計画は調査結果によって左右されることになる。

2.インド西部グジャラート地震からの地域経済復興に関する研究

【視点・問題意識】
  阪神・淡路大震災は、未曾有の都市災害であることは確かであるとしても、災害からの経済復興を考える上では一事例にすぎない。2001年グジャラート地震は、我が国と同様自由主義的な経済を持つインドという国家において、同じくブージ・バチャウといった都市を襲った巨大災害であり、港湾に大きな被害が出たことなど類似点も少なくなく、災害被害から経済がどのように復興するかという一般的な傾向を把握する上で極めて重要な事例となりうる。特に、インドは英語がかなり通用する国であるから、資料収集やヒアリング等において他国の事例に比してやりやすい。

【研究内容】
  阪神・淡路大震災に比較すると、震災からまだ3年経過した程度であり、既存研究が少なく、またあったとしてもアクセスが困難であることが予想される。従って同じようなアプローチを採用することは不可能である。
  特に、グジャラート経済の構造変化を現時点で把握することは無理なため、(1)被災地経済の特性を整理し、(2)マクロ経済の趨勢をまとめ、(3)震災が各産業部門に与えた影響について整理し、(4)うち復興政策の効果について検討する。

【期待される効果とその意義】
  高度成長を続け、人口構造の若いインドの事例は、日本の事例と比較することで、人口構造や社会経済構造の違いが災害復興過程にどのような影響を及ぼすのかについて示唆深い。また、新規立地企業に対する税の減免制度やNPO・NGOらによる雇用促進など、国際社会の支援を受けながら他国では見られない新しい試みも少なくない。こうした事例の一部は我が国の災害復興政策に対して適用出来る可能性もある。

【平成17年度の研究計画】
  前述の(3)(4)について検証する。現地の企業を対象とした社会調査を行い、特に被災地への投資活動に対する税の減免措置が各種産業の復興にどのように影響を及ぼしたのかを明らかにする。

3. 復興財政制度に関する研究

【視点・問題意識】
  我が国において復興のための財政制度というのはない。代わりに災害復旧事業について国庫補助の対象とし、自治体負担分を起債により充当することを認める災害復旧事業制度、規模が大きい場合には補助率を嵩上げするための激甚災害制度、災害救助のための資金を積み立てる災害救助基金制度、さらに不測の支出を補う特別交付税制度等、いくつかの制度を地方自治体がそれぞれの文脈で使い分けることによって災害復興のための資金を確保している。しかし、このような制度に果たして問題はないのだろうか。

【研究内容】
  本研究の内容は次のように構成される。第一に、既存制度の詳細とそれが歴史的に果たしてきた役割についてレビューを行う。阪神・淡路大震災の復興財政についてのレビューはすでに行ったが、既存の制度が何を目的としてどのような経緯で創設されたのか、これまでの災害についてどのような役割を果たしてきたのかを評価する必要性がある。
  これをふまえ、第二に現在の復興財政制度が、災害時の資金需要リスクをどのように分散させているのかを実証的に明らかにする。特に、災害時の財政負担は(1)自治体の自己保険、(2)他の自治体とのリスクシェア、(3)将来世代への転嫁、のいずれかに分解することが可能であるが、それぞれがどの程度の割合を占めるのか、過去の災害財政データから明らかにする。
  第三に、こうした復興財政制度を所与とした場合に、次の巨大災害時にどの程度の財政負担が必要となるかを明らかにし、問題の所在を明らかにする。
  第四に、これらをふまえてあるべき復興財政制度について検討を加える。

【期待される効果とその意義】
  人口減少、ゼロ成長時代における災害復旧・復興制度のあり方について具体的な制度提案に資する研究となる。

【平成17年度の計画】
  今年度においては特に第一および第二の点について研究を遂行する。

4.防災政策のガバナンスに関する研究

【視点・問題意識】
  近年において、政策立案・執行・評価など、いかなる政策過程においてもNGOやNPO、民間企業、市民などの非政府主体の役割が増大している。こうした多様な主体によって政策が構成されていく過程を「ガバナンス」という概念で捉えようというのが今日の公共政策論における一つのトレンドである。本研究は、防災政策におけるガバナンスの現状と、そのあるべき姿について論じようとするものである。

【研究内容】
  例えば防災行政に関わるテーマとして、災害対策基本法が定める防災行政スキームの再検討が挙げられる。例えば防災基本計画や地域防災計画を定めることになっている中央防災会議や地方防災会議の参加者には民間営利企業やNPO、地域住民は含まれておらず、公的セクターの防災計画となっている。こうした政策スキームは果たして今後の防災にとって望ましいものなのかどうか、そもそも地域防災計画とはいかにあるべきなのかなどについて明らかにすることも重要な課題である。

【期待される効果とその意義】
  防災行政の目指す具体的方向性を示す。または防災行政のスキームを再検討する材料を提供することができる。

【平成17年度の計画】
  地域防災計画に関する研究のレビューを行い、今後の防災行政の方向性について考察する。これらは大大特成果普及事業や人と防災未来センターの災害対策専門研修を通じて現場の知恵や情報を集約することを目指す。

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